ストークスの定理を図と動画で理解|回転と線積分がつながる理由

ストークスの定理は、次の式で表されます。

$$\iint_S(\nabla\times\mathbf{F})\cdot d\mathbf{S}$$

$$=\oint_C\mathbf{F}\cdot d\mathbf{l}$$

左辺は、面 \(S\) でベクトル場の回転の足す面積分。右辺は、その面の境界 \(C\) を一周する線積分です。面の中を調べる計算と、外周をたどる計算が、同じ値になると述べています。

同じ正方形の面Sを比較。左は面Sを紫の小区画に分け、各区画の回転の寄与と面積の積を足す面積分。右は境界Cを反時計回りにたどる橙の矢印と線積分。二つの計算は同じ値になる。
同じ正方形の面Sを比較。左は面Sを紫の小区画に分け、各区画の回転の寄与と面積の積を足す面積分。右は境界Cを反時計回りにたどる橙の矢印と線積分。二つの計算は同じ値になる。スマートフォンでは面積分を上、線積分を下に配置。 定理の面積分は面積ベクトルdSを用い、Sを太字にする。

この式を理解するために、この記事では二つの疑問に答えます。

なぜ、ベクトル場の回転と線積分がつながるのか?

なぜ、小さな範囲の回転を足すと、大きな範囲の外周の線積分になるのか?

まず、小さな長方形を一周する計算から回転の式が現れる理由を調べます。次に、その小区画を並べて足すと、内側の辺が打ち消し合い、外周だけが残ることを確かめます。

冒頭の式に出てくる記号や内積の意味は、この二つの疑問をたどりながら確認します。後半では、正方形を傾けるシミュレーションで、場の差や進む向きが一周の線積分にどう影響するかを調べ、平面から曲面へ考え方を広げます。

計算に使う数学を確認する
内積:二つのベクトルの向きと大きさを結びつける。
偏微分:一つの方向への変化率を調べる。
線積分:道に沿って内積を足し合わせる。
ベクトル場の回転:場の局所的な回転の向きと強さを表す。

まず、一つ目の疑問「なぜ回転と線積分がつながるのか」を考えます。小さな長方形の四辺に沿って、線積分を計算しましょう。ベクトルを成分に分ける考え方は、ベクトルの基礎で確認できます。

目次(このページで分かること)

場の差を距離で割ると、偏微分になる

偏微分は、一つの方向へ進んだときの「場の値の差 ÷ 進んだ距離」の極限です。たとえば、\(y\) を固定して \(x\) 方向へ \(\Delta x\) だけ進むと、十分に小さな \(\Delta x\) に対して、

$$\frac{F_y(x+\Delta x,y)-F_y(x,y)}{\Delta x}$$

$$\approx\frac{\partial F_y}{\partial x}(x,y)$$

と近似できます。この「差を距離で割る」という形が、小さな長方形を一周する線積分にも現れます。

小区画を \(R\) とし、左下を \((x,y)\)、横幅を \(\Delta x\)、縦幅を \(\Delta y\) とします。線積分は図の反時計回りに一周すると考えます。

小区画Rの幅はΔx、高さはΔy。境界CRを反時計回りにたどり、その線積分をΓとする。図の橙の矢印が一周する向きを示す。

区画の境界を \(C_R\)、一周の線積分を \(\Gamma\) と書くと、

$$\Gamma=\oint_{C_R}\mathbf{F}\cdot d\mathbf{l}$$

です。\(d\mathbf{l}\) は、道に沿う微小な移動ベクトル。内積を取るため、進行方向の場の成分だけが寄与します。同じ向きなら正、逆向きなら負、直角ならゼロです。

x方向だけの場では、下辺と上辺の差になる

まず横成分だけを持つ場を取り出し、\(\mathbf{F}^{(x)}\) と書きます。肩に付けた \((x)\) は「場の成分の向き」であり、値が \(x\) だけで決まるという意味ではありません。

$$\mathbf{F}^{(x)}=(F_x(x,y),0,0)$$

ここでは、場の変化を直線で表せるほど十分に小さい区画を考えます。一つの方向について、\(ax+b\) のような一次関数で表せる、つまり変化の割合がほぼ一定とみなせる範囲です。この前提で、各辺の線積分を計算します。

四隅に(x,y)、(x+Δx,y)、(x,y+Δy)、(x+Δx,y+Δy)の座標を示す。横成分の場と反時計回りの経路。下辺の寄与を+Fx(x,y)Δx、上辺を−Fx(x,y+Δy)Δxで近似する。左右の辺は寄与ゼロ。

下辺:右へ進み、図の場と同じ向きなので、寄与は

$$+F_x(x,y)\,\Delta x$$

上辺:左へ進み、図の場と逆向きなので、寄与は

$$-F_x(x,y+\Delta y)\,\Delta x$$

です。左右の辺は場と移動が直角で、寄与はゼロ。したがって、一周の線積分 \(\Gamma_x\) は、

$$\Gamma_x\approx[F_x(x,y)-F_x(x,y+\Delta y)]\,\Delta x$$

この式の分母と分子に距離 \(\Delta y\) を掛けると、

$$=\frac{F_x(x,y)-F_x(x,y+\Delta y)}{\Delta y}\,\Delta x\Delta y$$

となります。分数は「上下の場の差 ÷ 上下の距離」です。通常の変化率とは差の順序が逆なので、

$$\frac{F_x(x,y)-F_x(x,y+\Delta y)}{\Delta y}$$

$$=-\frac{F_x(x,y+\Delta y)-F_x(x,y)}{\Delta y}$$

$$\approx-\frac{\partial F_x}{\partial y}(x,y)$$

です。これを代入すると、

$$\Gamma_x\approx-\frac{\partial F_x}{\partial y}(x,y)\,\Delta x\Delta y$$

が得られます。辺に沿って場を足した計算が、偏微分と面積の積になりました。

y方向だけの場では、右辺と左辺の差になる

次は縦成分だけの場です。考え方は同じで、寄与する辺が入れ替わります。

$$\mathbf{F}^{(y)}=(0,F_y(x,y),0)$$

四隅に(x,y)、(x+Δx,y)、(x,y+Δy)、(x+Δx,y+Δy)の座標を示す。縦成分の場と反時計回りの経路。右辺の寄与を+Fy(x+Δx,y)Δy、左辺を−Fy(x,y)Δyで近似する。上下の辺は寄与ゼロ。

右辺:上へ進み、図の場と同じ向きなので、寄与は

$$+F_y(x+\Delta x,y)\,\Delta y$$

左辺:下へ進み、図の場と逆向きなので、寄与は

$$-F_y(x,y)\,\Delta y$$

です。上下の辺は場と移動が直角で、寄与はゼロ。二つの寄与を足すと、

$$\Gamma_y\approx[F_y(x+\Delta x,y)-F_y(x,y)]\,\Delta y$$

今度は、分母分子に距離 \(\Delta x\) を掛けます。

$$=\frac{F_y(x+\Delta x,y)-F_y(x,y)}{\Delta x}\,\Delta x\Delta y$$

分数は「左右の場の差 ÷ 左右の距離」なので、

$$\frac{F_y(x+\Delta x,y)-F_y(x,y)}{\Delta x}$$

$$\approx\frac{\partial F_y}{\partial x}(x,y)$$

となり、

$$\Gamma_y\approx\frac{\partial F_y}{\partial x}(x,y)\,\Delta x\Delta y$$

が得られます。縦成分でも、一周の線積分が偏微分と面積 \(\Delta x\Delta y\) の積になりました。

Γy≈[Fy(x+Δx,y)−Fy(x,y)]Δy。Δxで割って掛けると、差分商×ΔxΔyになる。差分商≈∂Fy/∂xより、Γy≈(∂Fy/∂x)ΔxΔy。

なぜ、小さな一周の線積分に回転が現れる?

ΓxとΓyを足すと、∂Fy/∂x−∂Fx/∂yという回転のz成分が現れる。小区画では一周の線積分は回転の垂直成分と面積の積に近似される。

横成分と縦成分の計算を合わせて、回転と線積分の関係を確かめましょう。一般の平面の場は、横成分だけの場と縦成分だけの場を足したものです。線積分も足し算を保つので、二つの寄与をそのまま合わせられます。

$$\mathbf{F}=\mathbf{F}^{(x)}+\mathbf{F}^{(y)}$$

$$\Gamma=\Gamma_x+\Gamma_y$$

\(\Gamma_x,\Gamma_y\) はそれぞれの場によるスカラー量で、ベクトルの成分ではありません。よって単純に足すことができ、

$$\Gamma\approx\left(\frac{\partial F_y}{\partial x}-\frac{\partial F_x}{\partial y}\right)_{(x,y)}\Delta x\Delta y$$

ここに現れた二つの変化率の差が、ベクトル場の回転の \(z\) 成分です。

$$(\nabla\times\mathbf{F})_z=\frac{\partial F_y}{\partial x}-\frac{\partial F_x}{\partial y}$$

いま一周した長方形は \(xy\) 平面にあります。\(z\) 方向は、その面に垂直な方向です。このような面に垂直な方向を「法線方向」と呼びます。回転の \(z\) 成分が現れたことで、この面の一周とベクトル回転が結びつきました。

この図では、紙面の手前が \(+z\) 方向です。先ほど選んだ反時計回りの一周は、この向きに対応しています。

$$\Gamma\approx(\nabla\times\mathbf{F})_z(x,y)\,\Delta x\Delta y$$

これが、回転と線積分がつながる理由です。一周の計算では、向かい合う二辺の場の差が残ります。その差を距離で割って偏微分の形にし、同じ距離を掛け戻すと、回転の垂直成分と面積の積になります。つまり、小さな一周の線積分 ≈ 回転の垂直成分 × 小区画の面積です。

数値例:二つの寄与を実際に足す

単位を持たせない数学上の例として \(\mathbf{F}=(-y,x,0)\) を使います。横幅 \(0.2\)、縦幅 \(0.1\) なら、横成分の寄与は \(0.02\)、縦成分の寄与も \(0.02\) です。

$$(\nabla\times\mathbf{F})_z=1-(-1)=2$$

$$\Gamma=0.02+0.02=2\times0.2\times0.1=0.04$$

この例は場が最初から一次式で、回転が一定です。そのため有限の長方形でも近似ではなく、正確に一致します。一般の滑らかな場では、代表点の回転と有限の面積の積は近似として扱います。

なぜ、小区画を足すと外周の線積分になる?

小さな一周の線積分と回転の関係が分かりました。次は、二つ目の疑問です。四つの小区画をそれぞれ反時計回りに一周して足すと、なぜ大きな面の外周だけを一周した計算になるのでしょうか。動画で確かめましょう。

動画の橙の矢印は線積分する向きです。隣り合う区画の共有辺では、同じ道を逆向きにたどります。内側の矢印が消える演出は、この寄与の相殺を表しています。

面全体Sを小区画Riに分け、各区画の境界をC_i、外周をCとする。共有辺の逆向きの線積分は正確に相殺する。回転と面積の積の和は分割の極限で面積分になる。

同じ場を同じ道で逆向きに積分するので、場が辺に沿って変化していても、共有辺の寄与は正確に相殺されます。外周の辺には打ち消す相手がないため、全区画の一周を足すと外周の線積分だけが残ります。

これが、小さな範囲の回転を足すと、大きな範囲の外周の線積分になる理由です。

正方形を傾けて、法線成分の意味を確かめる

二つの疑問は、\(xy\) 平面上では解決しました。では、面を傾けた場合には、回転のどの成分を使うのでしょうか。先ほどの「x方向だけの場」と同じ考え方で、正方形の四辺を一周して確かめましょう。

ここでは、単位を持たせない数学上の例として、次の場を使います。

$$\mathbf{F}=(0.6-y,\,0,\,0)$$

矢印はすべてx方向を向き、\(y\) が大きくなるほど短くなります。この場の回転は、どこでもz方向を向く、大きさ1のベクトルです。

$$\nabla\times\mathbf{F}=(0,\,0,\,1)$$

正方形は一辺1、面積1とし、大きさを変えずに傾けます。青は場、橙は一周する向き、紫は回転、深緑は単位法線 \(\mathbf{n}\) です。法線と一周する向きは、右ねじの関係にそろえます。

まず、水平な正方形で上下の差を確かめる

水平なとき、下辺は \(y=-0.5\)、上辺は \(y=0.5\) にあります。場の大きさは下辺で1.1、上辺で0.1です。下辺を右へ、上辺を左へ進むので、一周の線積分は次の値になります。

$$\Gamma=1.1\times1-0.1\times1=1$$

左右の辺では、場と進む向きが直角なので寄与はゼロです。先ほどと同じく、下辺と上辺の場の差が残るわけです。

では、この正方形を傾けると、何が変わるでしょうか。「y方向に傾ける」と「x方向に傾ける」を切り替えて比べてください。まずは「水平 0°」から「縦 90°」までを見てみましょう。

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