同じ大きさの電荷を与えても、導体の形や配置が変わると、導体間の電位差は変わります。では、どのような形にすると電位差が小さくなり、静電容量が大きくなるのでしょうか。
この記事では、まずシミュレータで導体の形とポテンシャルの関係を観察します。その後、平行板コンデンサを例に、静電容量を数式で計算します。
コンデンサの働き、充電と放電、静電容量の定義については、先に「コンデンサと静電容量」をご覧ください。
この記事で前提とする知識
- 静電平衡にある導体の正味の余剰電荷は、導体表面に分布する
- 導体表面は等電位になる
- 電荷分布からポテンシャルを計算できる
形を変えると静電容量はどうなる?
正負の導体に蓄えられた電荷量の大きさを \(Q\)、導体間の電位差の大きさを \(\Delta V\) とすると、静電容量 \(C\) は次の式で表されます。
$$C=\frac{Q}{\Delta V}$$
ここで、\(\Delta V=|V_+-V_-|\) です。電荷量 \(Q\) を一定にして比べるなら、電位差 \(\Delta V\) が小さい形ほど、静電容量 \(C\) は大きくなります。

そこで、固定した電荷に対して電位差が小さくなる形を、シミュレータで探してみましょう。
シミュレータで探してみる
このシミュレータでは、2つの導体に単位長さ当たり \(+Q’\)、\(-Q’\) の電荷を与えます。導体の形を変えても、正負それぞれの総電荷量の大きさ \(|Q’|\) は一定です。
画面左には導体の形、電位分布、表面電荷分布が表示されます。画面右の3D表示では、ポテンシャルが高い場所を山、低い場所を谷として表しています。
測定された電位差を \(\Delta V\) とすると、単位長さ当たりの静電容量 \(C’\) は次の式で計算されます。
$$C’=\frac{|Q’|}{\Delta V}$$
うまく表示されない場合は、シミュレータを別ページで開いてください。
例えばこんな場合
- 同じ電荷が、より広い表面に分布できる形にすると、電位差はどうなるでしょうか。
- 正負の導体を近づけると、電位差はどうなるでしょうか。
例1:電荷が広く分布できる形
まず、正負の導体を小さな形から縦に長い形へ変えます。導体間隔と総電荷量 \(|Q’|=50\,\mathrm{pC/m}\) は変えません。

小さな導体では、電荷が狭い範囲に集まり、ポテンシャルの山と谷が高くなっています。このとき、電位差は \(4.16\,\mathrm{V}\)、静電容量は \(12.0\,\mathrm{pF/m}\) です。
導体を縦に長くすると、同じ総電荷がより広い表面に分布します。3D表示では、正側の山が低く横長になり、負側の谷も浅くなりました。
その結果、電位差は \(2.08\,\mathrm{V}\) まで小さくなり、静電容量は \(24.0\,\mathrm{pF/m}\) へ増えました。電位差が半分になったため、静電容量は2倍です。
例2:正負の導体を近づける
次は、導体の形と総電荷量を変えず、正負の導体間隔だけを小さくします。

導体が離れているときは、正導体の山と負導体の谷が大きく分かれています。電位差は \(3.09\,\mathrm{V}\)、静電容量は \(16.2\,\mathrm{pF/m}\) です。
正負の導体を近づけると、正導体上では負電荷が作る負のポテンシャルの影響が強くなり、負導体上では正電荷が作る正のポテンシャルの影響が強くなります。そのため、正側の山と負側の谷の高低差が小さくなります。
この例では、電位差は \(0.560\,\mathrm{V}\) まで小さくなり、静電容量は \(89.2\,\mathrm{pF/m}\) まで増えました。
2つの例に共通すること
2つの例では、導体の形や配置の変化に合わせて、表面電荷分布とポテンシャルが変わりました。
- 同じ総電荷を、より広い表面に分布させる
- 正負の導体を近づける
どちらの場合も、同じ電荷量で生じる電位差が小さくなり、静電容量が大きくなりました。
広く分布させて、正負の導体を近づけると、静電容量は大きくなる
この関係を、形が単純で計算しやすい平行板コンデンサで数式として確かめます。
平行板コンデンサの静電容量を計算する

面積 \(A\) の2枚の導体板を、間隔 \(d\) で平行に向かい合わせます。一方の極板に \(+Q\)、もう一方の極板に \(-Q\) を与えます。
この計算で使う条件
- 静電平衡の状態を考える
- 極板間は誘電率 \(\varepsilon\) の一様な線形媒質で満たされている
- 極板の縦横の寸法は、極板間隔 \(d\) より十分に大きい
- 極板の端で電場が曲がる端効果は無視する
- 電荷は極板上に一様に分布する
1.表面電荷密度を求める
面積 \(A\) の極板に電荷 \(Q\) が一様に分布しているため、表面電荷密度の大きさ \(\sigma\) は、
$$\sigma=\frac{Q}{A}$$
です。

2.極板間の電場を求める
十分に広い1枚の極板が作る電場の大きさは、片側で \(\sigma/(2\varepsilon)\) です。2枚の極板の間では、正極板と負極板が作る電場が同じ向きに重なります。

したがって、極板間の電場の大きさは、
$$E=\frac{\sigma}{\varepsilon}=\frac{Q}{\varepsilon A}$$
となります。電場の向きは、正極板から負極板へ向かいます。
3.極板間の電位差を求める

端効果を無視すると、極板間の電場は一定です。極板間の電位差の大きさは、
$$\Delta V=Ed=\frac{Qd}{\varepsilon A}$$
となります。
4.静電容量の定義に代入する
求めた電位差を \(C=Q/\Delta V\) に代入します。
$$C=\frac{Q}{\Delta V}=\frac{Q}{Qd/(\varepsilon A)}=\frac{\varepsilon A}{d}$$
最初に与えた電荷量 \(Q\) が消え、静電容量は極板の面積 \(A\)、間隔 \(d\)、媒質の誘電率 \(\varepsilon\) で決まることが分かります。
$$C=\frac{\varepsilon A}{d}$$

シミュレータの結果と式を対応させる
面積Aを大きくする
極板の面積 \(A\) を大きくすると、同じ電荷 \(Q\) がより広い範囲に分布するため、表面電荷密度 \(\sigma=Q/A\) は小さくなります。
すると電場 \(E\) と電位差 \(\Delta V\) が小さくなり、静電容量 \(C\) は大きくなります。式 \(C=\varepsilon A/d\) からも、静電容量は面積に比例することが分かります。
間隔dを小さくする
極板間の電場 \(E\) が同じなら、間隔 \(d\) を小さくすると、電位差 \(\Delta V=Ed\) は小さくなります。
式 \(C=\varepsilon A/d\) では、静電容量は間隔 \(d\) に反比例します。極板間隔を半分にすると、静電容量は2倍になります。

数値を入れて計算してみよう
1辺が \(10\,\mathrm{cm}\) の正方形の極板を、\(1.0\,\mathrm{mm}\) 離して向かい合わせます。極板間は真空とし、端効果は無視します。
真空の誘電率は、
$$\varepsilon_0\approx8.85\times10^{-12}\,\mathrm{F/m}$$
です。面積と間隔をSI単位へ直します。
$$A=0.10\,\mathrm{m}\times0.10\,\mathrm{m}=1.0\times10^{-2}\,\mathrm{m^2}$$
$$d=1.0\,\mathrm{mm}=1.0\times10^{-3}\,\mathrm{m}$$
これらを \(C=\varepsilon_0A/d\) に代入すると、
$$C=\frac{8.85\times10^{-12}\times1.0\times10^{-2}}{1.0\times10^{-3}}=8.85\times10^{-11}\,\mathrm{F}$$
$$C=88.5\,\mathrm{pF}$$
となります。
注意点
- 平行板の式 \(C=\varepsilon A/d\) は、極板の大きさに比べて間隔が十分に小さく、端効果を無視できる場合の近似です。
- 媒質が真空なら \(\varepsilon=\varepsilon_0\) です。一様な誘電体で満たされている場合は、その誘電体の誘電率 \(\varepsilon\) を使います。
- シミュレータは2次元モデルで、電荷量 \(Q’\) と静電容量 \(C’\) を単位長さ当たりで表示します。平行板の数値例で扱う3次元の総電荷 \(Q\)、静電容量 \(C\) と数値を直接比較するものではありません。
- この記事では電荷一定の状態を中心に考えました。電源につながれて電圧が一定の場合は、静電容量が変わると電源から出入りする電荷量が変わります。
まとめ
- 固定電荷で比べると、電位差が小さい形ほど静電容量は大きい
- 同じ総電荷を広く分布させると、ポテンシャルの山と谷の差が小さくなる
- 正負の導体を近づけても、導体間の電位差は小さくなる
- 一様な媒質中の理想的な平行板コンデンサでは \(C=\varepsilon A/d\)
- 平行板では、極板を広くして間隔を小さくすると静電容量が大きくなる
静電容量の公式を暗記するだけでなく、「同じ電荷で生じる電位差がどれくらいか」という視点で見ると、導体の形や配置と静電容量の関係を理解しやすくなります。
