1個の電荷から受ける力は、クーロンの法則で求められます。では、まわりに電荷が2個、3個とあるとき、試験電荷が受ける力はどうなるのでしょうか。
この記事では、複数の点電荷が及ぼす力をベクトルとして足す「重ね合わせの原理」を、図と動画で確かめたあと、数式と数値例で整理します。
1個の点電荷が及ぼす力や、ソース電荷・試験電荷の意味を先に確認したい方は、「クーロンの法則」をご覧ください。

まずは合力の向きを予想しよう

二つのソース電荷があるとき、試験電荷 \(Q\) にはどの向きの力が働くでしょうか。
図や動画で答えを見る前に予想してみましょう。それぞれのソース電荷から試験電荷へ向かう力の矢印を描くと、最終的な力はどちらを向くでしょうか。

試験電荷が受ける力は、それぞれのソース電荷が及ぼす力のベクトル和になります。
$$\mathbf{F}=\mathbf{F}_1+\mathbf{F}_2$$
ここで重要なのは、力の大きさだけでなく、方向も考慮するため、ベクトル和をとります。一般には \(F=F_1+F_2\) ではありません。各力を \(x\) 成分と \(y\) 成分に分け、それぞれの成分を足します。
重ね合わせの原理とは

複数の原因があるとき、それぞれの原因が単独でつくる効果を計算し、最後に足し合わせて全体の効果を求める考え方を重ね合わせの原理といいます。
クーロン力の場合は、ソース電荷ごとに試験電荷へ及ぼす力を求め、それらをベクトルとして足します。ほかのソース電荷が増えても、1個ずつ求めて足すという手順は変わりません。
重ね合わせで足すのは「距離」や「力の大きさ」ではなく、力のベクトルです。
次のシミュレーションでは、電荷を動かすと、各力の向きや大きさが変化し、それに応じて合力も変化します。それぞれの力を1本ずつ確認し、合力がベクトル和になっていることを確かめてみてください。
2個のソース電荷がある場合

ソース電荷 \(q_1\)、\(q_2\) の位置ベクトルをそれぞれ \(\mathbf{r}_1\)、\(\mathbf{r}_2\)、試験電荷 \(Q\) の位置ベクトルを \(\mathbf{r}_Q\) とします。
ソース電荷 \(q_i\) から試験電荷 \(Q\) へ向かうベクトルを \(\mathbf{R}_i\) とすると、
$$\mathbf{R}_i=\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_i$$
とします。その大きさと単位ベクトルは、
$$R_i=|\mathbf{R}_i|$$
$$\hat{\mathbf{R}}_i=\frac{\mathbf{R}_i}{R_i}$$
です。クーロンの法則から、電荷 \(q_i\) が試験電荷 \(Q\) に及ぼす力は、
$$\mathbf{F}_i=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_iQ}{R_i^2}\hat{\mathbf{R}}_i$$
と表せます。したがって、2個のソース電荷が及ぼす合力は、
$$\mathbf{F}=\mathbf{F}_1+\mathbf{F}_2$$
$$\mathbf{F}_1=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1Q}{R_1^2}\hat{\mathbf{R}}_1$$
$$\mathbf{F}_2=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_2Q}{R_2^2}\hat{\mathbf{R}}_2$$
となります。\(q_iQ\) が正なら \(\hat{\mathbf{R}}_i\) と同じ向きの斥力、負なら反対向きの引力になります。
ソース電荷がn個ある場合

ソース電荷が \(n\) 個あっても、考え方は同じです。各ソース電荷が及ぼす力を \(\mathbf{F}_i\) とすると、合力は、
$$\mathbf{F}=\sum_{i=1}^{n}\mathbf{F}_i$$
です。クーロンの法則を代入すると、
$$\mathbf{F}=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\sum_{i=1}^{n}\frac{q_i}{R_i^2}\hat{\mathbf{R}}_i$$
となります。電荷が増えて式が長くなっても、「1個ずつ力を求め、ベクトルとして足す」という意味は変わりません。
例題:2つの電荷が及ぼす合力

真空中に、次の3個の正の点電荷が固定されているとします。座標の単位は \(\mathrm{m}\)、電荷量の単位は \(\mathrm{C}\) です。
- ソース電荷 \(q_1=+1.00\,\mu\mathrm{C}\)、位置 \(\mathbf{r}_1=(-2,2)\,\mathrm{m}\)
- ソース電荷 \(q_2=+1.00\,\mu\mathrm{C}\)、位置 \(\mathbf{r}_2=(-1,-2)\,\mathrm{m}\)
- 試験電荷 \(Q=+1.00\,\mu\mathrm{C}\)、位置 \(\mathbf{r}_Q=(1,0)\,\mathrm{m}\)
クーロン定数は \(k=1/(4\pi\varepsilon_0)\approx8.99\times10^9\,\mathrm{N\,m^2/C^2}\) とします。
電荷q1から受ける力
電荷 \(q_1\) から試験電荷 \(Q\) へ向かう変位ベクトルは、
$$\mathbf{R}_1=\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_1=(1,0)-(-2,2)=(3,-2)\,\mathrm{m}$$
です。その大きさと単位ベクトルは、
$$R_1=\sqrt{13}\,\mathrm{m}$$
$$\hat{\mathbf{R}}_1=\frac{(3,-2)}{\sqrt{13}}$$
となります。したがって、
$$\mathbf{F}_1=kq_1Q\frac{(3,-2)}{13\sqrt{13}}$$
$$\mathbf{F}_1\approx(5.75\times10^{-4},-3.84\times10^{-4})\,\mathrm{N}$$
電荷q2から受ける力
同様に、
$$\mathbf{R}_2=\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_2=(1,0)-(-1,-2)=(2,2)\,\mathrm{m}$$
$$R_2=2\sqrt{2}\,\mathrm{m}$$
$$\hat{\mathbf{R}}_2=\frac{(2,2)}{2\sqrt{2}}$$
なので、
$$\mathbf{F}_2=kq_2Q\frac{(2,2)}{16\sqrt{2}}$$
$$\mathbf{F}_2\approx(7.95\times10^{-4},7.95\times10^{-4})\,\mathrm{N}$$
2つの力をベクトルとして足す
\(x\) 成分どうし、\(y\) 成分どうしを足すと、
$$\mathbf{F}=\mathbf{F}_1+\mathbf{F}_2\approx(1.37\times10^{-3},4.11\times10^{-4})\,\mathrm{N}$$
となります。合力の大きさは、
$$|\mathbf{F}|=\sqrt{F_x^2+F_y^2}\approx1.43\times10^{-3}\,\mathrm{N}=1.43\,\mathrm{mN}$$
です。向きは \(x\) 軸の正方向から反時計回りに、
$$\theta=\arctan\left(\frac{F_y}{F_x}\right)\approx16.7^\circ$$
となります。図を見て予想した向きと比べてみてください。
まとめ

- 複数の点電荷が及ぼす力は、各点電荷が及ぼす力をベクトルとして足す。
- 2個のソース電荷なら、\(\mathbf{F}=\mathbf{F}_1+\mathbf{F}_2\)。
- \(n\) 個のソース電荷なら、\(\mathbf{F}=\sum_{i=1}^{n}\mathbf{F}_i\)。
- 力の大きさをそのまま足すのではなく、成分ごとに足す。
- 各力は \(\mathbf{R}_i\) の向きと、電荷の積 \(q_iQ\) の符号から決まる。
重ね合わせの原理が分かると、電荷が何個に増えても、問題を「1個ずつクーロン力を求め、ベクトルとして足す」という同じ手順に分解できます。
