クーロンの法則、静電気学

2つの電荷を離すと、電気の力はどのように弱くなるのでしょうか。まずは式を読む前に、電荷を動かして確かめてみましょう。

この記事は、電荷の意味と、同符号なら反発・異符号なら引き合うことを理解している前提で進めます。まだ確認していない方は、先に「電荷とは何か?」をご覧ください。

目次(このページで分かること)

電荷同士には、どんな力が働く?

左の電荷 \(q\) は固定されています。右の電荷 \(Q\) をドラッグして、距離 \(R\) と力の大きさ \(F\) がどう変化するか観察してください。

いろいろな距離を通るように電荷 \(Q\) を動かすと、グラフに曲線が少しずつ現れます。曲線が完成したときに表示される関係が、

$$F\propto\frac{1}{R^2}$$

です。距離が2倍なら力は \(1/4\)、3倍なら \(1/9\) になります。

クーロンの法則

先ほど動かして確認した「電荷同士に働く力」を数式にしたものが、クーロンの法則です。まずは力の大きさだけを表します。

$$F=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{|qQ|}{R^2}$$

  • \(F\):電荷同士に働く力の大きさ(単位:\(\mathrm{N}\))
  • \(q,Q\):2つの電荷の電荷量(単位:\(\mathrm{C}\))
  • \(R\):電荷間の距離(単位:\(\mathrm{m}\))
  • \(\varepsilon_0\):真空の誘電率

真空の誘電率は、

$$\varepsilon_0\approx8.85\times10^{-12}\,\mathrm{F/m}$$

です。また、係数 \(1/(4\pi\varepsilon_0)\) はクーロン定数 \(k\) と書くこともあります。

$$k=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\approx8.99\times10^9\,\mathrm{N\,m^2/C^2}$$

したがって、力の大きさは次のようにも書けます。

$$F=k\frac{|qQ|}{R^2}$$

式から分かる3つのこと

電荷量が大きいほど力は強い

距離が同じなら、力の大きさは \(|qQ|\) に比例します。

$$F\propto|qQ|$$

片方の電荷量を2倍にすると力も2倍、両方を2倍にすると力は4倍になります。

距離が大きいほど力は急激に弱くなる

電荷量が同じなら、力の大きさは距離の2乗に反比例します。

$$F\propto\frac{1}{R^2}$$

距離 \(R\)\(R=1\,\mathrm{m}\) のときと比較\(q=Q=1\,\mu\mathrm{C}\) のときの力
\(0.5\,\mathrm{m}\)4倍\(35.95\,\mathrm{mN}\)
\(1.0\,\mathrm{m}\)1倍\(8.99\,\mathrm{mN}\)
\(2.0\,\mathrm{m}\)\(1/4\)\(2.25\,\mathrm{mN}\)
\(3.0\,\mathrm{m}\)\(1/9\)\(0.999\,\mathrm{mN}\)

電荷の符号で力の向きが決まる

同符号の電荷は反発し、異符号の電荷は引き合います。これは電荷の記事で確認した内容です。

ここまで使った \(|qQ|\) を含む式は、力の大きさを表すための式です。力の向きは、後ほどベクトルで表します。

なぜ距離の2乗なの?

距離の2乗が現れる理由は、点電荷のまわりに広がる電場を球面で考えるとイメージしやすくなります。

点電荷には特別な方向がないため、その影響は中心からあらゆる方向へ対称に広がります。半径 \(R\) の球の表面積は、

$$S=4\pi R^2$$

です。半径を2倍にすると球の表面積は4倍、3倍にすると9倍になります。同じ広がりをより大きな球面で受け取ると考えると、単位面積当たりの強さは \(1/4\)、\(1/9\) になります。

$$\text{電場の強さ}\propto\frac{1}{4\pi R^2}$$

試験電荷が受ける力は電場の強さに比例するため、クーロン力も \(1/R^2\) に比例して弱くなります。

注意:これは空間的な広がりを理解するためのイメージです。電気的な物質が、点電荷から実際に流れ出して薄まっているという意味ではありません。また、球面の説明だけでクーロンの法則を独立に証明しているわけではありません。

ここまで扱ってきたのが静電気学

ここまでは、位置が変化しない電荷同士に働く力を考えてきました。このように、時間的に変化しない電荷と電場を扱う分野を静電気学と呼びます。

電荷が移動すると電流になり、磁場や電磁誘導、電磁波へと話がつながります。静電気学は、電磁気学を学ぶ最初の土台です。

ソース電荷と試験電荷

電磁気学のテキストなどで時々出てくる用語として次があります。

  • ソース電荷(源電荷)\(q\):別の電荷へ力を及ぼす側
  • 試験電荷 \(Q\):力を受ける側

2つの電荷の間に働く力は本来対等です。しかし、力の向きを整理するときは、「力をつくる側」と「力を受ける側」に役割を分けると分かりやすくなります。

この記事では、ソース電荷 \(q\) を固定し、試験電荷 \(Q\) が受ける力 \(\mathbf{F}\) を考えます。次節で登場する3Dシミュレータでも、この役割分担に合わせて \(q\) を固定し、\(Q\) を動かします。

力の向きも数式で表そう

ここまでは力の大きさを中心に考えました。しかし、3次元空間で力を表すには、角度を含めどちら向きに働くかも必要です。

ソース電荷 \(q\) の位置ベクトルを \(\mathbf{r}_q\)、試験電荷 \(Q\) の位置ベクトルを \(\mathbf{r}_Q\) とします。

ベクトル、位置ベクトルについては、ベクトルの基礎をご覧ください。

電荷 \(q\) から電荷 \(Q\) へ向かうベクトルを \(\mathbf{R}\) とすると、

$$\mathbf{R}=\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_q$$

です。その大きさ、つまり2つの電荷間の距離は、

$$R=|\mathbf{R}|$$

となります。さらに、電荷 \(q\) から電荷 \(Q\) へ向かう単位ベクトルは、

$$\hat{\mathbf{R}}=\frac{\mathbf{R}}{R}$$

です。これを使うと、電荷 \(Q\) が受ける力は次のように表せます。

$$\mathbf{F}=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{qQ}{R^2}\hat{\mathbf{R}}$$

\(qQ\) が正なら \(\hat{\mathbf{R}}\) と同じ向き、負なら反対向きです。これにより、同符号の反発と異符号の引力を1つの式で表せます。

\(\mathbf{R}=\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_q\)、\(R=|\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_q|\) を代入すると、次の形になります。

$$\mathbf{F}=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{qQ(\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_q)}{|\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_q|^3}$$

分母が3乗に見えますが、分子の \(\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_q\) が距離 \(R\) の大きさをもつため、力の大きさはこれまでと同じく \(1/R^2\) に比例します。

次のシミュレータで青い電荷Qを動かし、位置ベクトルの差 \(\mathbf{R}\) と力 \(\mathbf{F}\)の向きを見みましょう。

例題:3次元空間で力を求める

位置 \((1,0,1)\,\mathrm{m}\) にある電荷 \(q=1\,\mu\mathrm{C}\) が、位置 \((0,1,1)\,\mathrm{m}\) にある電荷 \(Q=2\,\mu\mathrm{C}\) に及ぼす力を求めます。

まず向きを予想する

どちらも正電荷なので、電荷 \(Q\) は電荷 \(q\) から離れる方向へ力を受けるはずです。計算結果がこの予想と一致するか確認しましょう。

電荷qからQへ向かうベクトル

$$\mathbf{R}=\mathbf{r}_Q-\mathbf{r}_q=(0,1,1)-(1,0,1)=(-1,1,0)\,\mathrm{m}$$

その大きさは、

$$R=\sqrt{(-1)^2+1^2+0^2}=\sqrt{2}\,\mathrm{m}$$

単位ベクトルは、

$$\hat{\mathbf{R}}=\frac{1}{\sqrt{2}}(-1,1,0)$$

力の大きさと向きを計算する

まず力の大きさは、

$$F=k\frac{|qQ|}{R^2}=8.99\times10^9\frac{(1\times10^{-6})(2\times10^{-6})}{2}=8.99\times10^{-3}\,\mathrm{N}$$

です。方向を表す単位ベクトルを掛けると、

$$\mathbf{F}=8.99\times10^{-3}\frac{1}{\sqrt{2}}(-1,1,0)$$

$$\mathbf{F}\approx(-6.36\times10^{-3},\,6.36\times10^{-3},\,0)\,\mathrm{N}$$

力は \(x\) 軸の負方向、\(y\) 軸の正方向を向いています。これは電荷 \(q\) から電荷 \(Q\) へ離れる方向であり、最初の予想と一致します。

30秒で復習

クーロンの法則では、電荷量・距離・符号から、力の大きさと向きが決まります。特に「距離を2倍にすると力は4分の1」という感覚を覚えておきましょう。

クーロンの法則は、これから学ぶ電場、電位、ガウスの法則へつながる出発点です。公式だけでなく、「距離を2倍にすると力は4分の1」という変化の感覚も覚えておきましょう。

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葉っぱ

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